ホームレス・バター 〜R’s favorite〜

「ホームレス・バター」

大きさがぴったり

うれしそうにわらって
冷蔵庫のバター置き場に
目覚まし時計をいれたのは
きみだ
すっぽりと填まり込んだ目覚まし時計は
そこから抜けなくなって
時間を知るために
ぼくらは
いちいち冷蔵庫を開けなくてはならない
夏はすずしいが
冬はさむい
また将来電池が切れた時のことを考えると
不安である
いや
ぼくらはまだいい
少しくらいさむくても
時間がわからなくなっても
でも
バターはどうなる
居場所を奪われて
かわいそうな
雪印・ホームレス・バター
そんなふうに文句をいうと
きみは
うれしそうにわらって
だってほら
大きさがぴったり

暗くなってゆく部屋の
机の上で
バターが溶けている
冷蔵庫の中で
小さく
目覚まし時計が鳴っている
きみの寝息を
胸に抱いている

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