「ホームレス・バター」
大きさがぴったり
と
うれしそうにわらって
冷蔵庫のバター置き場に
目覚まし時計をいれたのは
きみだ
すっぽりと填まり込んだ目覚まし時計は
そこから抜けなくなって
時間を知るために
ぼくらは
いちいち冷蔵庫を開けなくてはならない
夏はすずしいが
冬はさむい
また将来電池が切れた時のことを考えると
不安である
いや
ぼくらはまだいい
少しくらいさむくても
時間がわからなくなっても
でも
バターはどうなる
居場所を奪われて
かわいそうな
雪印・ホームレス・バター
そんなふうに文句をいうと
きみは
うれしそうにわらって
だってほら
大きさがぴったり
★
暗くなってゆく部屋の
机の上で
バターが溶けている
冷蔵庫の中で
小さく
目覚まし時計が鳴っている
きみの寝息を
胸に抱いている