自然の中で気づくこと

2泊3日で乗鞍へ出かけた

Jと私の夏休み

7月は2回しか会えなかったから、とても苦しく悲しい日々だった

会えなかった間、Jは私をあまり構ってくれず、Jを感じられない毎日が続き、もうすぐ限界というところまで、力が入らなくなっていた

声も聞けない

話もできない

顔も見られない

触れることもできない…

そんな日々が信じられないほど、Jとの距離が一気に縮まった限定3日間だった

私は乗鞍で山登りデビューを果たした

Jが買ってくれたトレッキングシューズとお揃いの帽子が大活躍

乗鞍は2702メートルの日本一高いところにあるバスターミナルから、いくつかの山に登ることができる

主峰である剣ヶ峰は3026メートル

登山道は石ころがゴロゴロしていたり、大きな石がグラグラした状態で重なり合っていてかなり足場が悪く、思ったより歩きづらくて大変だった

最後は石につかまりながら、何とか這い上る感じで、デビューにしてはなかなかハードな登山だった

しかしとても楽しかった!

お天気に恵まれ、青空に美しい雲

透き通っていて遠くの山々まで見渡せた

達成感!

山頂で「やったね!」ってJと握手

清々しくうれしかった

普段見ることができない美しい自然を見ると、自分は何のために生きているのだろうと考えさせられる、

とJが言った

必要最小限のモノだけを持ち、必要最小限の衣食住のための収入で生活するのでいいんだ…

何が大切?

何のために生きたい?

一番幸せだと感じることは何?

何で今できていないのか?

兎にも角にも二人で一緒にいたいのに、二人でいない大量の無味な時間を毎日毎日消費し続けている

義務かのように毎日決まった時間に起き、Jは世にもややこしい仕事をこなし、私は通勤電車に揺られ1時間かけてバイト先に通う

仕事先も帰る場所も一緒じゃない

なんで?

働かなければ食べていけない

それはそうだが、今のこの生活

本当にしたいことじゃない

別の方法があるはず

別の方法を見つけ出さなければ…

そんなことが、大自然の中に二人きりポツリといる時に、はっと気づかされる

普段、いかにいろいろなことをぼやかして生きているか

日常に流され、固定観念やべき論で自分を縛りつけて…

もっと自由でいいはずなのに

今すぐに目的が達成されないことはわかる

だからその目的のために、今、何ができるかだと思っている

目的を達成するまでの過程で、どのように行動していくかを考えたい

できる限りのことを精一杯やりたい

そう思っている

二人を守らなきゃ

二人の手で二人の将来を作っていかなきゃ

だから今の今も、強固に繋がっていなきゃと思う

会えない日も手を繋いでいなきゃと思う

自然はシンプル

余計なものがなく、静かに、いつも、そこにある

そういう場所に身を置くと、急に神経が研ぎ澄まされる感じがする

大自然の中の人間はとても小さい

自分の芯の部分を問われ、本来の自分が見えてくる

高原のかわいい花が優しく笑っていた

人間はややこしくてかわいそう

私たちは、ここで、静かに咲いて、風にそよそよと揺れてるだけだもの

そう言ってるように思えた

何度も何度も思い描いている

Jと小さな街の小さな家で穏やかに暮らすこと

必要最低限のお気に入りのモノ達に囲まれて、丁寧に生活する

人間の本来の姿

人生に求めるもの

本当の幸せ

わかりやすくシンプルな日々

心に余裕があって、思いやりに溢れ、お互い労わり合って、死ぬまで愛し合って…

美味しい手作りのご飯でJを満たし

暖かいぴったりの身体でJを満たし

快適な優しい眠りでJを満たす

私の一番したいこと

Jの言う通り、100歳まで生きるとしたら後まだ半分以上ある

一緒にいない今のような時間は人生の一部であり、一緒にいる時間が遥かに上回るはず…

今回の旅で記憶に刻まれるJの言葉

ATは神様のプレゼント

愛してること何も変わらない

信じていいよ

2階建てのアパートを見つけた夢を見た、茶色い外壁の…

帰りの車は何も喋れなくて悪いことをしたと思う

渋滞の道を真剣に運転し、疲れのため息をつくJに、何を言ったらいいかわからなかった

ゴール地点が刻一刻と迫り、気分は塞いでいく一方で、Jをだまって見つめることしかできなかった

Jの横顔や腕を見つめていると色々な思いが頭を巡り、何も言葉が出なくなった

Jを毎日、自分の目で見られる人がいる

Jと毎日、目を合わせて話ができる人がいる

Jの腕に、触ろうと思えば毎日手が届く人がいる…

私は悲しくてたまらなくなった

横になった

ついさっきまでJが手に届くところにいたんだよね

昨晩は同じお布団で眠ったんだよね

一緒に朝昼晩、ご飯を一緒に食べたんだよね

信じられない

この激しすぎるギャップにどう対処したら良いのかわからない

車の中で日本地図を見た

二人は何て遠く離れてるんだと思った

めちゃくちゃ遠い

今朝まで一つの部屋にいたのに

散り散りになって

心粉々になって

日常に立ち向かわねばならない

いつになったら神様

私たちを一緒にしてくれるの

お布団の中で手を組んでお願い事の時のような気持ちになった

その組んだ手を鼻に近づけたら、少しJの匂いがした気がした

匂い直したら気のせいだった

Jのかけらもそばにない

自然は二人を強く結びつけてくれる

二人に心のずれがないって少しずつ証明してくれる

きっと

百名山に登ろう

登りたい、

登ろうね

この恐ろしいほどの喪失感

戦いがはじまる

いない

Jが

ここにいない

死ぬほど愛しているのに

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする