蜃気楼

蜃気楼/中田裕二

花びらの小舟に

憂いを浮かべて

時間のせせらぎに

流されて消えた

蜃気楼 夏の炎

日陰に逃れて

命を嘆くような

蝉時雨に包まれて

帰れない 戻れない

遥か遠く彼方へ

そう思うがままに

行きたいところまで

手を引かれながら

笹の葉がざわめき

風がすり抜けて

砂利道を踏む音

雨上がりの空

夕闇立ち込めて

静まる街はずれ

遠くの山々も

燃えるように赤く染まって

愛せば誰もが

我を忘れるだろう

どうしたらあなたと

ひとつになれるか

思い巡らせた

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