ウォーキングの道

私にとってはものすごい勇気あるチャレンジだった。

Jが住んでいた街を通り抜けるルートでウォーキングをした。

しかもこの一番良くない季節に。

3時間半位、黙々と歩き、2万歩を超えた。

日差しが強く、暑くて熱中症になりかけた。途中雨も降る。

Jの旧家の最寄駅を示す案内版や、地名の看板を目にした時、身体が緊張で硬くなり、涙が少しだけ目に浮かんだ。

駅からJの家に向かう並木道が右手に見えて、みるみるうちにいろんなことが蘇る。木々はあの頃から成長し立派な新緑のトンネルを作っていた。

今まで20年以上、電車で通る時は寝るか音楽に集中して、駅名をなるべく見たり聞いたりしないようにしてきた。顔を上げないで。

どうしても用事ができて一度だけ、駅に降り立ったことがあった。Jと再再会する前の話。途端に具合が悪くなり吐き気がしてきて、頭が朦朧とし、すぐさま駅に戻り電車に乗って別の場所に移動したのだった。

でもこの悲しみは、峠を越えたのかもしれない。乗り越えられてこそいないが、何度も振り返して最高点まで達し、それから終息に向かっているのかもしれない。。

私はやれるだけやった。この悲しみに対してできることを。

私は死ぬほど悲しんだんだ。この悲しみを全身に浴びて。

でも動かないの。変わらないの。私の力ではどうにもならなかった。

助けてくれないの。どうにもしてくれないの。何年も何年も誰も。

2人の気持ちの強さで、その場所に対する思いも変わってくると思っていた。私の周りが変わったように。

変わらない。私から見て何も変わったように見えない。

今は諦めの気持ちが大きい。どうにかなるように思えなくて。

目を伏せながら、そのエリアを通り越した時、手に力が入った。何かをぎゅっと掴んで、耐えていたのだ。

でも過呼吸も動悸も吐き気も起こらなかったから、まあ、良しとする。

なんというか、挑戦して小さく闘ってみた。けれど、やはり自分の力が上回っている感は全くなかった。まだまだだ。

その場所に怯えることのない日がいつかくるかどうか。

目的地に着いたら、一気に重い疲れが襲ってきた。普通のウォーキングとは明らかに違っていた。

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