一番罪が深い人

今朝、ふいに、きれいなたくさんの花に囲まれて、Jと結婚式を挙げる映像が頭の中を流れた

海の近くのすごく日差しの明るい場所で、私たちは祝福されている

Jの笑顔が晴れやかで眩しくて、こんな幸せは他にどこにあるんだろうかと思う

全体が光に溢れ白っぽく、私のドレスが風に揺れている

もう、ドレスも似合わない歳になってしまった

幻想は何を現しているのか

私は一体どうしたいのか

これから何が起こるのか

何もわからない

電車を最前列で待っていて

少しふらふらした

落ちて死んだら

私の周りの人がどんなふうに反応するか少し想像してみた

非難されようが、軽蔑されようが、生きるべきだ

自分の首だけが飛んでいって、それを見て叫ぶ人を想像した

それはやはりだめだ

生きるべきだ

楽しいことや幸せを感じること

それは自分の気持ちに正直に選び取るしかないんだろう

自然な感覚やその時々の空気で

それが他人から見てどうであろうと、自分基準でいくしかない…

しかし、それが、わがままということだ

確かに誰かを苦しめては駄目だろう

でも、苦しめようとわざとそのように行動してるわけじゃない、私だってできれば誰も苦しませず生きていきたいんだ

酷い人だと、友達から言われている

最もだ

友達の忠告にショックを受けているし、理解しているつもりだが、行動に落とし込むことが私には難しい

要するに馬鹿だ、ということだ

頭で分かっていても本質を理解していない

もっともっと痛い目にあえばいい、と

それでやっとわかるか、と

さて、どう生きるか

自分が、一番の悪であるように思えてくる

いや、思う、じゃなくて実際そうか

何人もの人を傷つけてきているということに対する自覚が足りないのだ

そう考えたら、Jは私よりは罪深くないのかもしれない

私を裏切ったことは、法律に背いたことではないし、その時傷ついたのは私一人なのだ

Jと正式に婚約していたわけでもなく、二人の間に子供がいたわけでもなく

私と付き合い続けている間も、Jは家庭を壊さず上手くやってきた

私が一人になってからも、そのままなのだから、自分の手で私のようにめちゃくちゃにはしていないということ

今は私の存在が長い間見えないから、すっかり普通の毎日に戻り落ち着いているのかもしれない

Jの家族や自分の家族の気持ちを無視し、どれほど傷つけるかを想像できずに、身勝手な行動を起こしたこの私が、一番の悪者なのだと今更ながら思い知らされた

他人を傷つけた上に自分の望みもいつまでも叶わない

他人の不幸の上に幸福は成り立たない

何度聞いた言葉だろう

私は一人、わがままで自己中心的な行動をし続けている

苦しいのは自業自得

そうなんだろう

午前中に全件で1400万円ぐらいの振込データを作成した

その振込先の中に、Jの実家の住所と同じ地名の銀行の支店名と、Jの相手の名前と同じ漢字を使う名前の人があった

思わず目を見開いたり、胸が締め付けられたり、相変わらず過剰反応する

けれど心は平坦で絶望感に満ちており、もはや、Jが相手と別れ私を迎えにくることなんて、天変地異が起きても皆無のように思えた

私がJの実家の最寄駅にお土産を持って降り立つことも一生できないような気がした

そうかと思うと、夕方には急にJの匂いが恋しくなり苦しくなって、気づいたら仕事の手が止まっていた

自分の今の状態がよくわからない

帰りがけに、友達から、恐らく最後のメッセージと思われる長い文章が送られてきた

それを全文iPhoneのメモに保存し、淡々と読んだ

私は大切な友達に完全に呆れられ、見放され、非難されて、信頼を失った

自分がこんな風にしか生きられないなんて思ってなかった

真面目で、明るく、楽しく、穏やかに、のびのびと、真っ当に無邪気に生きていけると、信じて疑いもしなかった

自分がこんなにも罪深い人間になるとは

私は人生をなめていた

これからの生き方もわからず、先が恐ろしい

Jを最初に失った時、私はなぜか死人のような顔で会社に通い続けていた

行かなくてよかったんだよ、私

昼休みになると、会社のすぐ側にあるデパートの屋上に一人で上がり、音楽を聴きながら悲しみと戦った

その時の空気を思い出していた

そう、ちょうど今頃だったのだろう

私の人生が狂い始めた季節

人のせいにするつもりはない

だけど、悲しいの

私の夢、二人の夢、一瞬で壊した

壊されたんだ

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