カムカムミニキーナ@下北沢

コロナ禍ではあるが、何とか上演に至ったカムカムを観に行った。下北沢に何年ぶりかで訪れた。本多劇場に柿喰う客を観に行って以来である。

乗り換えの渋谷駅は激変していた。渋谷には余程の用事がないと行かないので、いつもその激変ぶりに驚かされる。特にどこにも立ち寄らず、そそくさと井の頭線に乗り換えいざ下北沢へ。

ザ・スズナリという歴史ある小劇場。存在を知ってはいたものの初めて足を踏み入れた。最近のカムカムの公演はキャパの大きい座・高円寺や東京国際フォーラムなどだったから、小さな古い芝居小屋で観られることが幸せだった。

今年は劇団旗揚げ30周年、松村さんと八嶋さんの生誕50周年でもある。なんとも感慨深い。私がカムカムに出会ったのは旗揚げから1年後の1991年だと思う。

早稲田大学敷地内のむちゃくちゃ狭い芝居小屋で、青空御殿というお芝居を観たのが最初。パワフルでおもしろくて興奮した。かなり衝撃的だった。

当時、小劇場に足繁く通い小さな劇団のお芝居ばかり観ていたのだが、カムカムミニキーナと東京オレンジ(堺雅人が所属していた)の2つが群を抜いて素晴らしかった。これは…絶対に有名になるわ!と確信していたのだけど、何年か後に八嶋さんや山崎さん、堺雅人さんがテレビに出るようになった時はびっくりした。

確か観始めた頃はチケット予約受付が松村さん個人の電話だった。最前列のど真ん中で観るのが、私の中で最高の演劇の楽しみ方なのだけど、あまりに劇場が狭すぎて、座った時ステージのふちに膝が当たってしまうことがあった。至近距離で役者の唾や汗を全身に浴びながら、エキサイティングな芝居を堪能した。終演後は、普通に出演者がロビーに出て観客を見送った。カムカムもすっかり有名になって、おそらくこの先もうこんなことは経験できないだろうと思うと、私はラッキーだった。

昔から松村さんの考えるお芝居はやたらややこしく、セリフが多く、終演後は大きなはてなマークが頭に浮かぶものばかりだった。だけど確実に面白くて、強烈に惹きつけられるものがあった。松村さんのぶつぶつと、八嶋さんのギャグは、毎回のお楽しみである。独特のカムカムワールドには中毒性があると思う。

今回の燦々七銃士は、こちら情報局33714で聞いていたように、実に爽快でいつもよりもわかりやすい内容だった。若手の活躍が素晴らしいと松村さんが話していた通り、確かに樽谷さんやおこんさんや篤姫の若々しさが眩しく清々しい雰囲気を作っていた。

しかし、私はやはり同年代である松村さんと八嶋さんのお芝居を観るとほっとするのだった。ベテランのどっしりとした重みある演技は、本当に素晴らしく感動的である。何というか、貫禄がありキレがあり粋でかっこいい。

声で威圧する演技について松村さんが語っていたが、高校で演劇部の端くれだった私にはそれがすごくよく分かった。客演の時、声をそんなに張らなくて良いと若い世代の演出家に注意されるとのこと。いや、90年代、役者というのは声が大きいことが必須だったのだ。同じ時代を生きてきた同じ世代の感覚なんだと何だか嬉しくなった。

古着屋さんを少し覗き、下北沢らしいカフェでランチし、大好きなカムカムを観て、帰りがけには電車の箸置きをもらうためのスタンプラリーを少し。

なかなか文化的な11月の幕開けであった。

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