6月1日だ。Jと再再会した日から丸9年。Jと10年ぶりに会ったあの日を忘れない。私たちはまだ若かった。9年前、この歳になる自分をまるで想像できなかった。
月が変わる前の日に、かけてあるカレンダーをむしる。
会社にはカレンダーが6箇所ぐらいにかけてある。派遣先は旅行会社のグループ会社の為、カレンダーの写真は世界各地の美しい景色である。
毎回めくる時、次はどこかな?と少しワクワクする。
今回は、イエローナイフの見事なオーロラの写真だった。思わず、おお、と声が出た。
写真を見ながらふと、私はオーロラを見ることが出来ずに一生を終えてしまうんじゃないか、と思った。
どうやって?何がどうなれば愛する人とオーロラを見に行けるんだろう。。
今日も誰かの旦那をやってる誰かの指に指輪がひかる。目を逸らす。
Jと、その相手の指にも輝き続ける。私の知らない場所で。考えたくない。
結局私は、好きな人の奥さんになり、ご飯を作ったり、一緒に買い物に行ったりしたいのだ。私一人を、奥さんとして大切にしてくれる人と、お互いに信頼し合い、いたわり合いながら生きていきたいのだ。
この9年、私は勝手に妄想して勝手に希望を持ち勝手にこんな風になったのだろうか。一人でバカみたいに暴れて。
思い込み。決めつけ。
仕事でもいつも怒られる。
自分はずっとそうだから、痛い目ばかりにあうのだ。そして、相変わらず自分のことしか考えられず、人々を悲しませ失望させ知らぬ間に傷つけている。
やりたかった色々なこと。そういえば、あんなこと、こんなこと。ただの夢物語に終わるしかないのか。そんなわがまま、元々叶えられるわけなかったのか。
ベッドの下にしまわれた箸置きやサンキャッチャー。暖かで穏やかで慎ましい生活を夢見て勝手に買ったり作ったり。
10年経ったなら、きちんと自分の負けを認めよう。
あと何年の人生が残されているのだろうか。
このままでは、冷たい小さなベッドに一人眠る日々が続き、いずれ死ぬだろう。
子供が独立するまで、もう可哀想な目には合わせたくないから、それを考えたら、自分の人生のパートナーなんて望めないのかもしれないと思う。
それとも、そんな私の願いをも大きく包み込んで、全部大丈夫だよ!って言ってくれる人がどこかにいるんだろうか。
しかし、私はどうしてこんな状態なのか。どうしてこの9年の間にJの奥さんになれなかったのだろう?
どうしてもなにもない。
なれなかったものはなれなかったのだ。
そういうこと。
人生どこからやり直していいのかわからないけど、やり直しなんてできない。
こうやって、私は進んできてしまった。これからはとにかく穏やかな毎日を。
もう若くない。