あの頃は本当に素晴らしい時代だった
初めてRと駅で待ち合わせて電車に乗った
スマホも携帯も無い時代だから、待ち合わせ場所は改札の前とかプラットホームの一番前とか、お互いが絶対に間違えないような場所
乗った電車には座ることができず、二人で並んで吊皮を持って立っていた
ふと、Rが
「こっち側に立って」
と言った
その日から、Rは右・Jは左に並ぶことが決まった
Rの体が自分の体にピッタリとはまる歩き方が今でもできる
山手線に乗り換えて高田馬場で下車した
小さな劇場に入る前に少し早めの夕飯をRと食べた
バブルは崩壊していたが、まだ少しだけ華やかな雰囲気が残っていた時代
高田馬場の駅の周辺は今と比べるとごちゃごちゃしていたと思う
Rと食事して、演劇を見て、帰りに喫茶店に寄った時には、Rのことが本当に好きになった
2か月後、花火大会の帰りの電車の中で、Rに交際を申し込んだ
Rが恥ずかしそうな顔をしながらコクリと頷いてくれた時のことを僕は一生忘れない
Rと付き合うようになってからは、とにかく1秒でも長い時間Rと一緒にいたかった
Rを自宅付近の駅まで送ってから、正反対の方向の家に何時間もかけて帰ることが何も苦にならなかった
生活のすべてをRのために使いたかった
数え切れないくらい、Rに「愛してるよ」と言った
どこに行く時もMTして、東京の街を二人で歩いた
・・・
ある日、自分の起こした過ちによって、今この瞬間もRと一緒にいるはずだった人生を台無しにしてしまった
・・・
それから長い月日が過ぎた
お互いが絶対に認めたくないような別々の人生を歩んで、さらに取り返しがつかないところまできてしまった
自分があんなことをしなければ現れることがなかったような人から憎まれ、数年前に頭を下げた
たくさんのお金をつかった
・・・
Rと過ごした日常の何気ないシーンやその時々の匂いが、それでも今、毎日のように思い出される
暑い日、寒い日
晴れの日、雨の日
朝、昼、夕方、夜
毎日がキラキラ輝いていた
本当に楽しくて充実していた時間
Rが隣にいるだけで全てが満たされた時間
今日はその記念日
みんなでご飯を食べた後、ファミレスの駐車場でポツンと立っていた僕に、Rが声をかけてくれたおかげでバラ色の人生がスタートした